cinemania 映画の記録

cinemania’s diary

「ヴァラエティ」誌が選ぶNetflixで配信中の日本アニメベスト20本(2021年版)

f:id:cinemania:20211126102441j:plain

 待望されていたNetflixの実写版『カウボーイビバップ』の公開によって、1998年のオリジナルシリーズへの注目が再び集まっており、日本のアニメがメインストリームにおいて文化的な浸透を果たしつつある事が改めて鮮明になった。
 アメリカでのアニメ人気は今に始まったことではないが――『NARUTO』『美少女戦士セーラームーン』『ドラゴンボール』などのクラシックはその一例にすぎない――メディアによって、その土台を強化しつつあることは論じるまでもないだろう。『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ』や『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』といったフランチャイズ映画の大ヒットは、アメリカの観客の関心が飛躍的に高まっている事を示している。さらに、メーガン・ザ・スタリオンのようなセレブも日本文化への愛を表明している。今年のハロウィンに限っても『ユーフォリア/EUPHORIA』のハンター・シェーファーや、YouTuberのブレットマン・ロックらが、アニメをモチーフにした仮装を披露していた。
 こうした傾向をいち早く取り入れたのがNetflixだった。配信サイトを拠点として増え続ける作品リストには、『月刊少女野崎くん』のような陽気なコメディから『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ような独創的な作品まで、ジャンルや視聴者層にとらわれずにアニメが提供されている。
 以前のような、目当ての番組をYouTubeの分割された動画で視聴する時代は過去のものとなり、今やアニメファンは豊富に取り揃えられたコンテンツを楽しむことができる。Netflixは彼らの関心を集めることに注力しているのだ。スパイク・スピーゲルたちとの宇宙の旅を終えた貴方に、Netflixの中から最高のアニメを紹介しよう。

『アグレッシブ烈子』

f:id:cinemania:20211126102701j:plain

烈子という名のレッサーパンダが嫌な仕事に追われる日々の生活をコメディタッチで描き、人を使い捨てにする労働環境を風刺した作品が『アグレッシブ烈子』だ。烈子は仕事帰りにカラオケでヘビー・メタルを熱唱することで安らぎを得ている。他人の目から逃れ欲求不満から開放された彼女は、人生や仕事、人間関係について、精神科医にかかっているかのように語りだすのだ。

『ブルーピリオド』

f:id:cinemania:20211126102719j:plain

勉強家だが迷いを抱えていた高校生、矢口八虎は、芸術への情熱に目覚める。それは彼の人生設計を大きく変えるものだった。大学の美術部に入部した八虎は、色とりどりの人々と出会い、将来への夢を大きく育てていく。『ブルーピリオド』はNetflixでは各話更新されている。

『キャロル&チューズデイ』

f:id:cinemania:20211126102746j:plain

まるで対照的な環境で育った二人の女性、キャロル・ステンリーと家出娘のチューズデイ・シモンズは、音楽を通して絆を深め、未来の火星都市で共にパフォーマンスする。シリーズの監督は『カウボーイビバップ』も手がけた渡辺信一郎で、数多くのオリジナル楽曲が登場する。

カウボーイビバップ

f:id:cinemania:20211126102836j:plain

1998年のアニメ『カウボーイビバップ』は、Netflixの新たな実写シリーズの原作で、ビバップ号に乗り込む宇宙の賞金稼ぎたちをめぐるネオノワール・アドベンチャーである。スパイク、ジェット、フェイ、エド、そして可愛らしいコーギーのアインが、それぞれの過去を抱えながら、さまざまな冒険に巻き込まれていく愛すべきSF西部劇だ。

DEATH NOTE

f:id:cinemania:20211126102902j:plain

正義とモラルをめぐる思索である『DEATH NOTE』は、高校生の夜神月が死神リュークの謎めいたノートを手に入れるところから始まる。名前を書くと犯罪者を殺せるデスノートを使って、月はイタチごっこの犯罪捜査にのめり込んでいく。この作品は、心理学的なサスペンスにあふれたシリーズとして、アニメファンからずっと愛されてきた。

鬼滅の刃

f:id:cinemania:20211126102930j:plain

竈門炭治郎は鬼によって家族を失い、ただ一人生き残った禰豆子も鬼に変えられていた。炭治郎は妹を人間に戻すために鬼殺隊に入隊することを決意する。前向きな炭治郎は、熱血漢の伊之助と心配性の善逸を仲間に迎えて鬼退治の任務に挑む。このシリーズはアメリカでもスマッシュ・ヒットとなり、今年の5月には、初の映画『無限列車編』が興行首位となっている。

DEVILMAN crybaby

f:id:cinemania:20211126103007j:plain

心優しい不動明と再会した幼なじみの飛鳥了は、人間界の堕落した隙間に猛獣のようなデーモンが忍び寄っていると明かす。了は明をデーモンのアモンと合体させ、二人はデーモンが引き起こす犯罪に挑む。しかしデーモンの復活は、世界中を破滅的な集団ヒステリーへと駆り立てていくのだ。『DEVILMAN crybaby』は、人間の存在意義に疑問を投げかける悲劇であり、その爆発的な激しさを増していく。

斉木楠雄のΨ難

f:id:cinemania:20211126103236j:plain

超能力を持つ斉木楠雄は、普通の高校生として暮らそうと努力している。残念なことに、そんな彼は風変わりな同級生たちの注目を集めてしまうのだ。学校では己の能力を隠そうとする斉木だったが、そのせいで災難に見舞われる事になる。

ドロヘドロ

f:id:cinemania:20211126103343j:plain

ドロヘドロ』はヴィジュアル的な空想に満ちた世界を舞台にした暴力的なドタバタ劇だ。カイマンは友人のニカイドウと共に、カイマンをワニ頭の怪物に変えた魔術師を探し求め、行く先々を血みどろに変えていく。どぎつい敵役やふてぶてしい語り口は目がくらむほどだが、愉快な作品であることは間違いない。

僕だけがいない街

f:id:cinemania:20211126103454j:plain

藤沼悟は数分前の過去に戻る超能力を持っている。だが、30歳になった悟は母が殺された事ををきっかけに18年前にタイムスリップしてしまう。母の死が幼いクラスメイトの誘拐事件と関係があることに気づいた悟は、超能力を駆使して彼女の失踪を防ごうとする。このミステリーと超自然的などんでん返しは、リアルな犯罪物のファンにとっても魅力的だろう。

鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST

f:id:cinemania:20211126103636j:plain

荒川弘による絶賛されたシリーズを2009年にリブートした『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』は、2003年に製作された作品(こちらもNetflixで配信されている)よりも原作を忠実に脚色している。物語は、錬金術師のエドワードとアルフォンスのエルリック兄弟が死んだ母親を甦らせようとして、エドは片腕と脚を、アルは体そのものを失ってしまうという悲劇的なミスが焦点となる。錬金術の才能を持つ少年たちは、政府の目を逃れながら体を取り戻す方法を探す。人間の原罪が実体化したような謎のホムンクルスと兄弟は幾たびも戦い、腐敗したシステムが生み出した残虐な行為が次々と暴かれていく。

『GREAT PRETENDER』

f:id:cinemania:20211126103901j:plain

向こう見ずな詐欺師の枝村真人は、紳士的な「コンフィデンスマン」のローレント・ティエリーに見いだされ、人生の歯車を狂わされていく。二人はアビゲイル・ジョーンズやシンシア・ムーアといった共犯者たちともに、世界各地で手の込んだ詐欺をくり広げていく。その動機は金銭から復讐までさまざまだ。念入りに組み立てられた犯罪物が好みの方々には『GREAT PRETENDER』をお勧めしたい。

HUNTER×HUNTER

f:id:cinemania:20211126104014j:plain

父親の行方を探すため、少年のゴンはハンターと呼ばれるエリート戦士集団に入ることを目指していた。この冒険活劇の第一部では、ゴンは危険なハンター試験に加わり、キルア、レオリオ、クラピカといった仲間たちと出会う。そしてゴンは、父親や新たな友人たちの動機や謎めいた過去を知ることになる。

犬夜叉

f:id:cinemania:20211126104113j:plain

日暮かごめは、ごく普通の現代の女子高生だが、戦国時代の日本へと引き寄せられてしまう。かごめと半妖である犬夜叉、そして新しい仲間たちは謎の悪人、奈落の刺客と戦いながら、強力な宝珠である四魂の玉のかけらを集めて旅をする。豊かな人間関係と魅力的で楽しい場面が、この冒険活劇を心に残る作品にしている。残念なことにNetflixでは最初の2シーズンしか配信されていないが、劇場版なら4本すべてを観ることができる。

ジョジョの奇妙な冒険

f:id:cinemania:20211126104142j:plain

数十年をかけ大陸をまたがり複数の世代にわたって展開するこの大作を表現するには、なるほど「奇妙な」という表現はうってつけだ。このシリーズは、ジョナサン・ジョースターの子孫たちと、不死身の宿敵であるディオ・ブランドーとの長年にわたる死闘を描いてきた。『ジョジョの奇妙な冒険』は、忠実なるファン層を誇っており、彼らは12月よりNetflixで配信されるシリーズ第6部「ストーン・オーシャン」を待ちわびている。

月刊少女野崎くん

f:id:cinemania:20211126104315j:plain

このシリーズは、若い女性を読者層にした 「少女マンガ」へのコミカルな自己言及だ。女子高生の千代は、憧れの野崎くんが有名な少女マンガ雑誌の作家であることを知り、すぐさまアシスタントとして採用される。この作品は、少女マンガの伝統に忠実であるが、同時にそれをひっくり返すような、ありふれた日常のロマンスへの陽気な応援歌でもある。

新世紀エヴァンゲリオン

f:id:cinemania:20211126104429j:plain

アニメの代表格である『新世紀エヴァンゲリオン』は、心理的に強烈な印象を与える作品で、10代の碇シンジと仲間たちが巨大なメカ「エヴァンゲリオン」のパイロットとして、人類を滅亡から守るために巨大な使徒たちと戦う姿を描いている。このシリーズでは、若きパイロットたちは己のトラウマと直面する。シンジは疎遠になっていた父親から冷酷な視線を浴び、残酷な選択を与えられ続けるのである。

映画 聲の形

f:id:cinemania:20211126104447j:plain

聲の形』は、聴覚障害を持つ少女、西宮硝子と、彼女を虐めた過去を持つ石田将也が高校時代に再会した際の感情的なやり取りを描いた映画だ。傷つきやすい人々の姿を力強く浮き彫りにした心揺さぶる青春ドラマであり、他者を求めつぐなおうとする姿を真摯に描いている。

ソウルイーター

f:id:cinemania:20211126104644j:plain

武器職人と人間兵器であるマカ=アルバーンとソウル=イーターのチームは、死神武器職人専門学校に通っている。このペアは同級生たちと共に、邪悪な魂や魔女を退治する。アクションとコメディのバランスが取れた作品だ。原作コミックと内容はかなり離れているが、アニメでも絶えずエキサイティングな冒険が繰り広げられる。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

f:id:cinemania:20211126104735j:plain

ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、それまでの人生を兵器として過ごしてきた女性ヴァイオレットの目を通して、戦争のトラウマを考察している。ヴァイオレットは他人の感情に興味を抱き、依頼人の言葉を読み取って感情を正しく伝える代筆家、「自動手記人形」となる。手紙を書くことで、ヴァイオレットは少しづつ人間の感情を理解しはじめ、武器としての自分を越えたアイデンティティを見つけていく。

variety.com

【インタビュー】クリント・イーストウッド『クライ・マッチョ(Cry Macho)』で再び馬を駆る

f:id:cinemania:20210913074739j:plain

――あなたは、ご自身の映画を自分のために選んでいるのですか、それとも人々にどう思われるか気にかけているのでしょうか。

どちらとも言えるかな。ただ『Cry Macho』は、ちょっと違うんだ。この物語に出会ったのは、もう40年も前のことだからね。俺は、このキャラクターにはちょっと似つかわしくないと思って断ったんだよ。ロバート・ミッチャムがお似合いなんじゃないかって助言したことを覚えているな。それでそのまま放ったらかしになってたんだ。折にふれて「あれはどうなったんだっけ」と気にかけていてね。

――なぜ、新しく西部劇を作るのに、こんなに時間がかかったのでしょうか。(注:西部劇は1992年の『許されざる者』以来となる)

さあね。俺は自分の考えを賢しらに説明するのが好みじゃなくてね。ただ、心の片隅で、そろそろ頃合いなんじゃないかと思えてきたんだ。メキシコシティにでかけて子供をさらって来るには、ちょうどいい年齢だとね。

www.youtube.com

――あなたは、監督も手がていますが、やはりそうした作業は大変なのでしょうか。

もちろん。こういう職業の愉しみのひとつは、いろいろなアングルから物事を探求することなんだよ。30歳と今とでは物の見方が違ってくるし、年齢を重ねるごとに考え方は変わったり広がったりする。それに、自分のやってきたことの善し悪しを振り返ることもできる。人生の後半に差しかかってから考えるのも良いが、俺は演技や監督を通して、ずっとそんなことをやってきたのさ。

――以前、メリル・ストリープは、『プラダを着た悪魔』の編集長役は、1995年に出演した『マディソン郡の橋』での、あなたの穏やかだけど説得力のある演出家ぶりを参考にしたと言っていました。

そんなの初耳だな。まあ、本当のことなんだろうね。彼女には観察眼があるし聡明だからね。褒め言葉として受け取っておくよ。

――サンフランシスコでの幼少期に、何か影響を受けた映画はありましたか?

父に連れられて、映画館で『ヨーク軍曹』を観たのを覚えている。彼に興味を持ったのは、第一次世界大戦で活躍した有名な人物で奥行きがある人物だったからだ。しかし、何に影響されたかというのは難しいな。

――感化された西部劇はありますか。

子供の頃から西部劇好きだったね。自分でもあんなことをしてみたいと考えていたものさ。でも、俳優という職業について真面目に考えたことはなかったな。陸軍に召集されるまでは、自分が何をしたいのかすらわからなかった。

――しかし、なぜ俳優だったのでしょうか。

当時はシアトルに住んでいたんだが、友だちの勧められるままロサンゼルスに出て、ロサンゼルス・シティ・カレッジに通うことになってね。演技に興味を持ち始めたのは、別の友だちが授業を取っていたからだ。それを見て、これは一体何なんだと思って調べ始めたんだ。最初は、人前で催眠術か何かにかかっているようになるのが理解できなかった。だがある時、テクニックがそこにあることに気がついた。その瞬間に身を任せてしまうんだ。それで取り憑かれてしまったわけだ。

――ネット上の風説では、あなたはマリリン・モンローの影響を受けて、そのかすれ声の演技を身につけたとあります。これは本当でしょうか。

マリリン・モンローだって? いいや、彼女の影響なんてないよ。若い頃に『バス停留所』の役を受けたことがあったな。監督のジョシュ・ローガンは、私と何とかという奴のどちらかを選ぶことになっていてね。彼女は魅力的だったから、ちょっと興奮していて、これはイケるかもしれないと思ったよ。もちろんそうはならなかった。ジョシュがニューヨークで別の男をキャスティングしたからね。意気込んではみたけれど空振りだったわけだ。

――『ヒッチコック劇場』や『死の谷の日々』など、1950年代後半には映画やドラマに出ていましたね。どのような経緯で『ローハイド』に出演することになったのでしょうか。

CBSスタジオで友だちと食事をしていたら、男が近づいて尋ねてきた。「君は俳優かね?」 いきなり俺はテレビドラマをやることになったんだ。食い扶持ができたわけだ。俳優業ってやつは、努力を重ねて自らを鍛え上げないと駄目なんだが、向こうの方からも、抜群のタイミングでいろんな事が起きてくれないとどうしようもないものなのさ。

――初めは海外にでかけてマカロニ・ウエスタンをやるのは気が進まなかったそうですね。

俺は絶対に嫌だと言ったね。なのに、(タレントエージェントの)ウィリアム・モリスのところの女性が、ローマの事務所に「台本は読みます」と請け負ってしまったんだよ。それで、その内容が俺が大好きな黒澤明の『用心棒』だってことに気づいたんだ。それに、1万ドルぽっちでスペインやイタリアで仕事をする段取りだったわけだが、俺はヨーロッパを訪れたことがなくてね。じゃあ出かけて行って良い旅にしてやろうと思ったわけだ。この映画(『荒野の用心棒』)は、アメリカで上映される前にヨーロッパで大成功を収めた。人生ってやつはいろんな事から回っていくものさ。

f:id:cinemania:20210913074929j:plain

――イタリアの著名な監督であるセルジオ・レオーネは英語を話せませんでした。どうやって彼とコミュニケーションをとったのでしょうか。

第二次世界大戦の時に通訳をしていたポーランド人女性がいてね。彼女は5ヶ国語を流暢に話せたので連れて行ったんだよ。結局は、彼が俺の名前を呼んだり、俺が彼の名前を呼びさえすれば、どうにかなったけどね。

――今年は『ダーティハリー』、『恐怖のメロディ』、『白い肌の異常な夜』の50周年にあたりますが、1971年はあなたにとって重要な年でしたね。ご自身の「タフガイ」というペルソナについてどう思われますか。

別に自己分析はしないな。でも、時にはダーティハリーのようなキャラクターを見て、彼らはどんな気持ちなのか考えることがあるんだ。自分が見たり聞いたり感じたりして人生から得たものを、そこに写しているわけだからね。

――誇りに思っている役はありますか、それは年を追うごとに変わっていくものなのでしょうか。

なるほどね。良い方向へと変化してきたと思っているよ。『許されざる者』のことを言ってるんだがね。それまでたくさんの西部劇を作ってきたが、この映画には異なった物語の要素があったんだ。『アウトロー』も興味深い物語だった。そして『ミリオンダラー・ベイビー』だ。時にはつまづくこともある。良いことも悪いことも起きる。


f:id:cinemania:20210913074950j:plain

――あなたが『許されざる者』で初めてアカデミー賞にノミネートされたのは62歳になってからでした。その事は気にかかりませんでしたか。

ご機嫌だったよ。いちばん嬉しかったのは、母を授賞式に連れて行けたことだ。俺は映画監督や俳優として成功してきたけれど、あの手のお祭りとは縁がなかったからね。だから楽しんだし、彼女を連れて行ったことは、今でも忘れられないな。トロフィーはどこかにしまってあるはずだ。

――1986年に市長に選出されたカーメル市とはどういう関係なのでしょうか。

従軍していたとき、フォートオード地区に駐屯していたんだ。もし金に余裕ができたら、こういうところに住んでみたいと思ったね。それで舞い戻って来て、ずっとここに住んでいるわけだ。まさか自分が市長になるとは考えてもみなかったがね。

――息子のスコットさんは俳優としてご活躍されていますし、娘のアリソンさんも映画に出演されていますね。二人がこの世界に入ることを応援していましたか。

焚き付けたことはないね。興味を示したから後押ししただけだ。誰でも天啓を感じたのなら実行すべきだと前から考えていた。というのも、いろんな連中が、俺を諦めさせようとしたからね。母は違ったけれど、父は「そんなものには手を出すな。ショービジネスなんてみんなクソだ」と言ってたよ。父はひねくれ者だったが、内心では好きだったと思う。大恐慌の頃、彼はパーティで歌う小さなグループに入っていたんだ。

――お父様は、あなたが映画スターになるのを見届けたのでしょうか。

ああ、彼はよく人に言っていた。「俺はこいつに、こんなことをするな、夢なんか信じるなと言ってたのに!」とね。彼は良い奴だった。大恐慌のさなかに家族を養おうとしていたんだ。職を転々とするのはハードだよ。父にとっては良い時代ではなかったが、子供から大人になる分には、面白くてクレイジーな時代だったね。

――裕福になった今でも、自分は「大恐慌時代の子供」だと思っていますか?

そうだな。時給34セントで袋詰めをしていたよ。俺はもう金のためには動かない。

――あなたの『運び屋』の中で、トビー・キースは『老いに身を委ねるな(Don’t Let the Old Man In)』というバラードを歌っています。この教訓を守るのは今では難しいでしょうか。

 容易いことだ。俺はそう信じてるからね。これまでたくさんの老いた人々と出会ってきたが、哀れに思うこともあれば、刺激をくれることもあった。老いに対処できない者もいるし、うまくやり過ごせる者もいるんだ。

――あなたが毎朝ベッドから抜け出せる理由は何ですか?

 ベッドから抜け出すためさ! 91歳になったという実感が沸かないのは、俺には91歳がどんなものかわからないからなんだ。祖父が90歳になったときのことを思い出すな。祖父はかなり元気だったので、体調さえ良ければ良い人生を送れるんだなと感じたよ。それに俺の母は97歳まで生きたからね。

――引退については。

 そんな事は考えてない。いつも次に何をするか答えを探しているんだ。本であれ芝居であれ誰かのアイディアについて話し合い掘り下げていくことは今でも大好きだ。他の連中は何本か映画に出たら辞めてしまうのかもしれない。それはそれで良いことだし、何か他にすべきことがあるんだろうな。でも俺はそうじゃない。映画が好きで映画作りを愉しんでいるからね。

――ご家族から相談を受けることも多いと思うのですが、あなたのお気に入りの名言というのはありますか。

ふさぎ込んでいる時には、立ち直る方法を見つけないといけない。俺はそんな時どう助言すれば良いのかはわからないな。それでも、前向きに努力し続ける必要があることはわかってる。すぐに諦めないことだ。俺はもともと前向きな人間だからね。何かうまく行かないことがあったら、どう修正していけばいいのかを考えるのが好きなんだよ。きっと、何かできるはずだからね。

parade.com